戌は身辺を今一度見直し整理する年
「戌」は、「一」と「戈(ほこ)」からなる字で、元は作物を刃物で刈り取り、ひとまとめに
締めくくることを表しています。昨年の「酉」が収穫できる状態だとすれば、「戌」は収穫した
後の段階と考えられます。
また、「ほろびる」を意味する「滅」であるとされ、草木が枯れる状態との見方もあります。
更には「戎(えびす)」であるとされ、「戎」とは古代の日本や中国において朝廷にまつろわぬ
(帰属せず同化を拒否した)集団に対する蔑称に用いられました。
十二支の夫々には「子」は「種」、「丑」は「根」というように植物の生育過程の意味が付与されて
おり、「子」~「辰」は、グングンと伸びてゆく期間を、「巳」と「午」は次代に命を繋ぐ為の
変化の期間を、そして「未」~「亥」は命を育む期間を意味しています。
樹木は実を結び(午)、果肉を膨らませ(未)、栄養や味を蓄え(申)、収穫(或いは種子を
飛ばす)を迎えます(酉)。これを社会に当てはめるならば、飛躍の手掛かりが現れるも(午)、
まだ改善の余地が有り(未)、更に質を高め(申)ることにより、更なる飛躍への鍵を手にする
のです(酉)。
鍵を手にしたら誰しも扉を開きたくなりますが、「扉を開く」を意味するのは「卯」の役目であり、
時期尚早と言えるでしょう。また「まつろわぬ」集団に対し付けられた蔑称ということから、周囲の
同意や理解を得るのは難しいでしょう。
前述したように「戌」は「滅」である為、草木が枯れることを意味していますが、「枯れる」が即ち
「破滅」や「失敗」を意味するのではありません。植物は枯れると云っても春へ向けて暫し休息を
得るので有って、生命を閉じるということではない筈です。また「戌」は収穫物を纏めるという
意味も持ち合わせていることから、転じて物事を整理することを意味していると言えるでしょう。
収穫したときには気付かなかった果実の傷み、熟しきらずに収穫してしまったもの、採り過ぎて
しまって処理出来ないもの等が整理している間に見つかってくる筈です。1日の仕事の終わりに際し
今日の自分の仕事に余計なもの(傷んだもの、採り過ぎたもの)は無かったか、不足していたこと
(熟しきっていないもの)は無かったか、細部にわたって確認作業をし必要なものだけを選択し、
翌日の仕事に繋げることで仕事の効率も上がり周囲からの信用も得られることでしょう。
逸る気持ちを抑え、一度立ち止まって身辺を整理し直すことが得策と言えるのではないでしょうか。