家族や親族に弔事が生じた際、不幸を乗り越え清浄な心身を回復し、
普段の日常生活に戻る為に一定の期間を設けることを「忌服(きぶく)」、
「喪がかかる」等と表現し、慣例としてこの期間の間は家庭や地域に於ける
神事や慶事への出席は控えるのが一般的ですが、これは清浄を尊び、死等の
穢を忌み、公を重んじる日本人の倫理・道徳観によるものです。
1.「忌(いみ)」とは
人の死を忌むことで、故人の死を悼み、御霊(みたま)をなごめる為の期間の
ことで、神道では最長で50日とされています。この忌の期間内にあることを
「忌中(きちゅう)」といい、この期間が過ぎるとを「忌明け(いみあけ・きあけ)」
となり、忌中の期間は下記の通りです。
2.忌の期間
3.忌中の心得
● 葬儀家にあっては神棚の前に白紙をはります。
● 地域に於ける祭礼行事や神社への参拝を遠慮します。
● 結婚式、祝賀会、式典等の人生儀礼への参加また行楽旅行を遠慮します。
● 祝い事の予定を忌明け後に延期します。
● 遠方にあって訃報を受けたときは、受けた日からその残りの日数の忌に服し、
忌の期間が過ぎていた場合は、その当日だけ忌に服します。
4.忌明けの心得
● 神道の場合は五十日祭(仏式は四十九日)の終了をもって忌明けとし、神棚の前に
貼った白紙を除いて平常の神棚の祭祀を再開します。
● 忌の期間中に「天照皇大神宮」や「氏神様」の御札の頒布があった場合は、忌明け後に
速やかに神社に出向いて御札をお受けしましょう。または忌中にお受けし、忌明け後に
神棚にお祀りしても構いません。
● 忌の期間中、立場上やむを得なく地域の祭礼行事や結婚式、お宮参り、七五三詣等の
人生儀礼に参加しなければならない場合は、忌明けのお祓い(卜抜き)を受けましょう。
5.「服(ふく)」とは
元来は人の死を悲しみ喪服を着ることを表します。忌の期間が終われば日常の
生活に戻る訳ですが、故人を偲び、当分の間は晴れがましい場所に出ることを
控えたいという思いは自然なことであり、このように身を慎みながら悲しみを
乗り越え平常心に立ち返ろうとする期間を喪中といいます。
「服」の期間は、本人の哀惜の情によって決められるべきもので、一律に日数を
区切って定めるのではなく、個々の心情に委ねられ、普段の生活に戻る為の
「心のけじめ」をつける期間として、慎みを表しつつ平常と変わらぬ生活を送る
ようにしてゆきます。
6.服の期間の心得
● 神社参拝や祭礼行事など神事にかかわること、また正月行事や年賀状を含む
年賀挨拶については差し支えありません。
● 本人の心情にもよりますが、徐々に日常の生活に立ち返るようにします。
● 故人を追慕する気持ちは大切ですが、悲しみを乗り越え、ご先祖様として
敬いの気持ちをもつよう心がけましょう。
上述のように、「忌」は故人の祀り(御霊なごめ)に専念しつつ、死による穢を除き
去る期間、「服」は故人への哀悼の意を表する期間を指し、それぞれの性格は異なり
ますので混同しないように心がけましょう。